安楽院は長野県内で初の葬祭センターを開設して以来、葬祭事業のパイオニアとして地域と共に歩んできました。現在では、長野市・須坂市・中野市の3市で、10の葬祭センターを展開しています。
葬儀や法事といったセレモニーの進行で重要な役割を担うのが、式典スタッフ(セレモニースタッフ)の存在です。式典スタッフは、大切な人を失ったご遺族に寄り添いながら、式を円滑に進め、最後の別れをサポートします。
この記事では、式典スタッフの主な業務内容やキャリアパスなどについて解説します。また、式典スタッフとして第一線で働く安楽院のスタッフへのインタビューも紹介します。
式典スタッフの業務内容は多岐にわたりますが、主に次のようなものがあります
祭壇、仏具、供物、座席のセッティングなど、会場の設営や備品の準備を行います。
出棺の際に参列者を誘導し、ご遺族の気持ちに寄り添いながら故人を見送ります。
僧侶や神職などの宗教者に対して、控室の案内や式の流れを確認します。
参列者が迷うことなく式場内を移動できるよう、受付・座席案内・誘導などを行います。
式典を時間内に円滑に進めるために、進行のアナウンスや参列者の焼香案内などを行います。故人への敬意を込め、厳粛かつ温かみのある式を演出します。
式典が終了して、ご遺族や参列者が退場すると、式場の後片付けと清掃を行います。翌日に式典がある場合はその準備作業をします。
セレモニーにおいて、もう一つ重要な役割を担うのが、葬祭ディレクターの存在です。
葬祭ディレクターの業務内容は、ご遺族との打ち合わせ及び葬儀プランの作成、葬儀の手配などです。主にプランニングを担う葬祭ディレクターに対し、式典スタッフは当日の準備や進行などを主に担当します。
出社、館内と式場の清掃
式典準備
出棺の見送り、式典準備の続き
お昼休憩
ご遺族の出迎え・打ち合わせ、開式の準備
宗教者への接待と進行の打ち合わせ
開式
閉式・ご遺族のお見送り
式場の片付け・清掃
退社
葬儀は午前中や夕方に行うこともあり、日によって出社や退社の時間が前後することもあります。また、閉式後にご遺族や参列者で食事をする場合もあり、その際は開始時の進行を式典スタッフが行い、配膳担当のスタッフに引き継ぎます。
安楽院では、次の3つの段階を踏んで一人前の式典スタッフを目指します。
入社してから司会を務めるようになるまでには、個人差がありますが、だいたい半年から1年間かかります。初めは先輩スタッフに付きながら、現場での仕事を通して式の流れや業務を覚えます。一人前になってからは、そのまま式典スタッフの仕事を極める人もいれば、管理職に就いたり、葬祭ディレクターに転身したりとキャリアはさまざまです。
安楽院ではさまざまな経験を積んでスタッフのキャリアアップにつなげるため、他の職種に触れる機会も用意しています。具体的には、葬祭ディレクターに同行して、ご遺族との打ち合わせへの立ち合いやお通夜の補助などを行っています。
安楽院で式典スタッフとして働いて今年で8年目となる浅川美風さんに、この仕事に就いたきっかけや、仕事のやりがい・苦労などについて話を聞きました。
(浅川)
大学卒業後に新卒で、安楽院を運営するNIKKOホールディングスに入社しました。2カ月間のグループ会社での研修では、結婚式場や温泉旅館などの各部署を経験し、その後典礼部に配属になりました。
私が典礼部を希望したのには、いくつかの理由があります。一つは、落ち着いた自分の性格に合っていると思ったからです。もう一つは、仕事のオンオフがしっかりしている職場で、話しやすい先輩が多かったからです。葬儀の厳かなイメージとは異なり、社内は明るく、スタッフ同士でもよくコミュニケーションをとっています。
そして、三つ目の理由は、他の仕事では経験できないことにチャレンジしてみたいと思ったからです。
(浅川)
この仕事をするうえで一番大切なのは、相手の気持ちをくみ取れること、理解しようと努力できることだと思います。式典スタッフには式を進行するだけでなく、ご遺族や参列者に対して真摯に向き合い、気遣いできることが求められます。
また、式典は一人で運営できるものではなく、他のスタッフとコミュニケーションを取りながら、チームで取り組むことが求められます。一般的な葬儀では、葬祭ディレクターを含めて、だいたい5人で運営にあたりますが、この他にも花を扱う部門や霊柩車を出す部門、葬儀後のサポートをする部門など、たくさんのスタッフが関わっています。そのため、コミュニケーションは欠かせません。
式典スタッフになるために、特に必要な経験や資格はありませんが、一番メインとなる業務は接客なので、接客業での経験があると強みになると思います。
(浅川)
ご遺族の心のケアをしたいという思いで仕事に臨んでいます。そのため、時には精神的に負担を感じることもあります。また、業務を行ううえで覚えることも多く、知識を蓄えるには時間がかかります。教材を読んで知識を身に付けるというよりは、場数を踏んで体で覚えていく感覚です。
葬儀での司会進行も最初はとても緊張しますが、経験を積むことで自信がついていきます。緊張すること自体は悪いことではなく、むしろ必要なものだと思います。良い緊張感を持って、ご遺族や宗教者と向き合うことが大事ですね。
(浅川)
「願い通りの送り方ができて、故人もきっと喜んでいます」、ご遺族からそんなお言葉をいただくと胸が熱くなります。事前にご遺族と打ち合わせを行う葬祭ディレクターとは異なり、式典スタッフは式の当日になって初めてご遺族と顔を合わせます。式が始まる前にお話をさせていただき、その気持ちをくんで司会者として寄り添いながら式を行うようにしています。
顔や名前を覚えてもらうことは少ないかもしれませんが、「心に残る式になりました」と式の後でご遺族から感謝のお言葉をもらえると、力になれたという実感があり、とても励みになります。
(浅川)
ご遺族への敬意をモットーに、その気持ちを最優先に考えてサポートすることです。なかには気が動転して言葉を発することさえ難しい方もいらっしゃいます。故人とご遺族にとって一度きりの葬儀ですので、そんな方に寄り添いながら、安心して式に臨んでいただけるよう穏やかに接することを心がけています。かつ、ご遺族の不安や要望に少しでも早く気づいて応えられるよう、常にアンテナを張っています。
また、式典スタッフには式を円滑に進めることが求められます。時間通りに進めるためには、スケジュールを頭に入れておくことはもとより、しっかりと段取りを行い、さまざまなパターンを想定して先のことまで考えて冷静に対応することが大切です。
(浅川)
式典スタッフは、体力的にも精神的にも忍耐力の求められる仕事です。また、ご遺族の悲しみに寄り添い、故人を見送る重大な仕事でもあります。人生の重要な一場面に触れるような仕事は他になく、サービス業の頂点と言えるかもしれません。
若いうちからこの仕事に携わることで、相手への気遣いや気持ちを感じ取る力が身につき、日常生活でも役立つ視点を得ることができます。私自身もこの仕事を通して、いろいろなことに挑戦することで成長につながり、生涯の基盤ができたと感じています。式典スタッフは難しい仕事というイメージがあるかもしれませんが、人間として成長につながる仕事なので、ぜひ若い人に挑戦してほしいですね。
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式典スタッフは、人との関わりを通して自分自身も成長できる仕事です。仕事で培われる経験が、人生において大きな財産になります。
あなたも式典スタッフという仕事を通して、自分を磨いてみませんか?